意識

■客観的な意識と主観的な意識

医学における「意識」は、客観的に他者に「意識」があるかどうかを判断するものである。
主観的に、私たちが感じている「意識」がどういうものなのかは、切り離して考える必要がある。

■意識の区別と範囲

意識の性質で1つはっきりいえるのは、「自分の意識」と「他人の意識」は区別できることである。
他人が見たり考えている情報にはアクセスできないし、他人の思考や体をコントロールすることはできない。
「意識の範囲」というのは、情報にアクセスまたはコントロールできる範囲と考えられそうである。
1人の人間が、感覚器官から入力を受け、運動器官出力するまでを、1つの範囲といえる。
コンピューターが、センサーから入力を受け、モーターへ出力するまでも、1つの範囲といえる。
1つの範囲と考えられるといだけでは、意識を持っているとはいえなそうである。

■反射と自由意志

意識のない人間が、脊髄反射で体を動かしたとしても、意識はない。
意識的に体を動かした場合は、体を動かすタイミングを「自由意志」で決めたと認識しているだろう。
コンピュータが、入力に反応して出力しても、タイミングを自分で決めたと思えないから、「自由意志」がないと思える。

■思考とループ

脊髄反射:入力 → 簡単な処理 → 出力 【一方通行】
意識的な行動:入力 → 思考 → 出力 【思考のところでループ?】
コンピュータ:入力 → 処理 → 出力  【一方通行?】
一方通行で情報が流れるだけの場合は、意識はないと思われる。
思考している間は脳内で情報の流れがループしており、任意のタイミングで出力していると解釈できる。

■ループによる情報保持

ニューラルネットワークにループがある場合を考える。
そこに、1回だけ電流を流せば、ずっと流れ続ける。
あるループに、電気が流れている状態と、流れていな状態の2つが存在できる。
この2つの状態間の遷移は、シナプスの重みが変更される必要がない。

■意識を持った生物への進化

意識を持たない生物:感覚器官から今現在の情報 → 脳内の情報が更新 → 運動器官へ出力
意識を持つ生物:感覚器官の情報+脳内の情報(過去や未来の感覚器官の想像) → 脳内の情報が更新 → 運動器官へ出力
過去や未来の状態を想像して、行動を決めようとするには、脳内 → 脳内 の情報の流れが必要になる。
すなわち、情報の流れのループが自然発生する。
また、ループによって保持された情報によって、どう行動するか決められるようになる。
それは、ただ1回だけ、ループに流れた電流によって、判断を変えられるようになることを意味する。
意識がなかっから、何度も繰り返して経験して、シナプスの重みが変化するまで、行動パターンは変えられない。
意識があることで、機械学習には困難な、ワンショットラーニングをしているような動きができる。

■意識の機能の広義の定義

情報のループがあれば、意識があるといえそうだが、まだ早計である。
プログラムにDO-LOOP節があるだけのものと、区別されなければいならない。
ループによって、どんな処理がされているかが、意識と関係ありそうである。
意識によるループでは、「脳内の状態」によって「脳内の状態」を決めようとしていると解釈できる。
機能的には脳である必要はない。
意識の機能の広義の定義:「情報媒体」の情報によって「情報媒体」の情報を更新する仕組み。更新可能、かつ、更新するための情報として使用可能な範囲を、1つの意識とする。
「情報媒体」は、コンピュータのメモリーでも良い。
脳内に眠っている過去の記憶データは意識に含まれないが、思い出している最中は意識内にコピーがある。
記憶装置だけでは、意識とはいえない。

■意識の機能の狭義の定義

情報の「更新」処理が人間と異なれば、人間と異なる意識になってしまうだろう。
人間と同等になるように、狭義の定義をしたい。
何らかの処理が行われるとき、ランダムでなければ、何らかの目的に沿っているといえる。
原始的な生物は、生き残るのを目的に、感覚器官からの入力を元に、運動器官への出力を決めていると思われる。
「快」を報酬、「不快」を不の報酬として、報酬を最大化しようとしているとも思える。
報酬とは関係なく、入力された情報を解釈して、予測した未来と、実測された未来の差を最小化しようとしているようにも思える。
何らかの「目的」があって、それを満たすための処理をしているといえる。
脳は最適とは限らないので、最適な処理である必要はない。
また、生物の進化の段階によって、「目的」はさまざまだろう。
「目的」が人間と全く同じであることまでは、「意識」に求めない。
意識の機能の狭義の定義:広義の定義に加えて、一定の目的に従った情報更新であること
情報の更新は、「知能」が行っているといえる。
意識は、「知能」がループした情報処理するための場を提供しているといえる。

■AIに意識を持たせるには?

入力 → 出力の一方通行ではいけない。
ワーキングメモリーが必要である。
現在のワーキングメモリーの状態から、次の瞬間のワーキングメモリーの状態を決められる仕組みが必要である。
全ての処理が意識によって行われるとすると次のようになる。
・全ての外部入力は、ワーキングメモリーへ入力される。
・全ての外部出力は、ワーキングメモリーから出力される。
意識を持たせること自体は難しくなく、ニューラルネットワークをループさせればよいだろう。
難しいのは、次の瞬間の状態を決めるための「知能」である。
脳を厳密に再現するか、あるいは「知能」を解明する必要がある。